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それって本当に国産!?産地偽装に悩まされる畳業界の現状

 

あなたが普段触れている畳はどこで作られたかご存知でしょうか?
現在、ホームセンターや通販ショップなどでも、上敷きと言われるゴザや、置き畳があります。
中国産と書いてあるものや国産と書いてあるものもあります。

問題はその国産と書いてあるものにあります。

今回は、奥井畳店がなぜ中国産を避けるのかと、産地偽装の現状をお伝えしたいと思います。

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中国産について

中国産の話になる前に、産地偽装についてお話したいと思います。
牛肉や、最近では熊本県産のアサリにも産地偽装があったり、食品だけでなくお墓の石や家具等でも産地偽装は行われています。

生産地が外国でも加工地が日本であれば日本産として扱えるという抜け道を利用してのことです。

イ草の場合、日本の苗を中国に運び育て加工し、日本で国産として取引されているということがあります。
これは上記の抜け道というより詐欺に近いです。

なぜこんなことが起きるのかというと、安値で購入したいが国産というブランドは欲しいという畳屋が問屋に騙されて買うパターンと、問屋から安値で仕入れた中国産を国産と偽り利幅を取ろうとする畳屋がいるというパターンがあります。

どちらにせよ、一般消費者のことを全く考えていない業界の不誠実さなので、そういったことに警鐘を鳴らし、奥井畳店としても信頼のおける取引をしたいと思っています。

後半の方でどういった産地偽装への対策がされているのかなどを解説したいと思います。

中国産は救世主でもある

まず初めに、中国産の畳表は、必ずしも完全悪ではないという説明からいたします。

現在国産畳表を生産できる農家の数がかなり少なくなっています。それに関しては後述するとして、その穴を埋めてくれているのが中国産の畳表ということになります。

現在4億畳以上の畳が日本にはあると言われており、その8割が中国産と言われています。

つまり、その8割を支えるために中国産が一気になくなってしまうと、我々畳業界が立ち行かなくなるということです。

奥井畳店としては、賃貸物件だとしても中国産ではなく国産畳表を使うべきだと考えていますので、ゆっくりにでもその割合が国産に傾いていけばいいなと考えています。

そのために当店では賃貸用の国産畳表を特別に織ってもらっています。これはあくまで賃貸用なので、しっかり長く暮らしていただくには頼りなくはあります。

しかし、あまりにも中国産が多いこの世の中で、少しでも安心できる国産畳表を楽しんでいただきたいという思いで提供しています。

中国産普及により起きた弊害

中国産畳表の普及は、低コストにすることにより安価で提供し、競争社会で生き残りたいと考える企業によるものでした。

その普及によって多くのイ草農家(畳表の原材料はイ草という植物で、それを製織することで畳表になる)が廃業に追い込まれました。

中国産は低コストであることや、生産技術の乏しさから、その品質は非常に悪いものだったため、中国産を使用した利用者は、その耐久性のなさや焼け色の汚さ、着色料の付着などで多くの被害があったのではないかと推測します。

その結果、「中国産=悪」のようなイメージもあったかと思いますが、それ以上に「畳=汚い」というイメージがついてしまいました。

それに加えて欧米やヨーロッパ、北欧の住生活様式がたくさん日本に入ってきました。
もちろんそういった諸外国には畳文化はありませんので、そういった海外様式のルームコーディネートが進むということは和室の減少につながります。

こうして、畳を多く広めようと外国産の畳を作った結果、奇しくも日本文化である畳を減少させるきっかけになってしまったということです。

海外様式、フローリングが悪なのか?

では輸入された海外様式、特にフローリング(洋室)が悪なのか?畳文化を攻撃する敵なので一切洋室をなくしてしまうことが正しいのか?と言われればそれは違うと考えます。

フローリングにはフローリングの良さがあり、それによって住環境が改善されたり、趣味嗜好の幅が広がることもあります。

お伝えしたいのは、和室には和室の良さがあり、フローリングと和室が共存している日本住宅が世界的に見ても珍しく、共存することで住環境をより豊かにしているということです。

フローリングと和室が共にあることで、お互いがお互いの欠点を補完しあい、部屋にもバリエーションがあることで、暮らしにもバリエーションが増えます。
なので余計にリフォーム等で和室→フローリングにして和室がなくなったお家を見るともったいないことをしているなと感じます。

和室からフローリングにすることはできても、フローリングから和室に戻すことは難しい可能性もあります。
その注意点などもまたご紹介できればと思います。

中国産のデメリット

ここでは奥井畳店がなぜ中国産を避けるのかをお伝えしたいと思います。

今までのお話で中国産についての考えも記述しましたが、具体的なデメリットを挙げていきます。

薬品を使用している

輸入する際にコンテナ船で運ぶので、湿気対策として防腐剤を使用せざるを得ません。もちろん人体に対して影響が出ないように開発されているでしょうが、微量では無害でも、ある程度の量からは有害である可能性がありますし、そういった薬品に何らかの症状が出てしまう敏感な体質の方もいらっしゃいます。

着色料を使用している

一見するときれいな色をしていても、それは着色料を使用しているせいである場合があります。実は昔は国産でも着色料を使用していたこともありましたが、それに人体に対して有害になる物質が含まれていたことから使用しないように努められています。

しかし中国産はコスト面から品質が悪いことが多く、それを隠すためにも着色料を使用することが多いです。雑巾で拭くと緑色が付着することもあります。

草質が違う

国産の畳表、特に熊本県で育てられているイ草は、そのままでも飲めるような地下水を使って育てられています。熊本県の大学でも、熊本県の水質は日本の中でも良いという研究を発表しているそうです。

ご存じの通り、食べ物で人間の身体が構成されるように、植物でも水はかなり重要な役割を果たしています。

中国産は、中国の自然環境で育つことになります。
中国は浄土汚染、空気汚染や工場からの排水による水質汚染などが後を絶たたない状況です。
もちろん都心部ではかなり改善されているのだとは思いますし、これからも改善は進んでいくと予想できますが、イ草を育てるには広大な土地が必要ですので、そうなると都心部でできません。

田舎の方になっていくとその問題が深刻化してくるので、そういった環境で育ったイ草は、草質があまり良くないものになってしまい、すぐにささくれるなどして耐久性が期待できないことが大いにあります。

人材の能力

ここで中国人の労働能力について批判をするつもりはありません。それを踏まえた上で理解していただきたいのですが、何かを製造する工場があったとき、生産コストを下げようと思ったら人件費を削るのが一番効果がでます。
だからこそ多くの日本企業がアジア圏の海外に生産拠点を設け、そこから逆輸入という形で日本で販売しています。

そして、そうやって人件費を削減するなら、あまり多くの人数を雇えません。そして様々な仕事ができる人物を高い給料で雇用するより、単純作業を低賃金でしてくれる人物を雇用するでしょう。

そういったことをしている工場が作る畳表が、日本の昔ながらの農家にクオリティが勝るでしょうか?

日本のイ草農家では、材料代の高騰や需要の低迷によるコストを農家サイドで吸収(自費負担)して、畳表を生産してくれているところがほとんどです。

現在、中国でも人件費が高くなってきていることから、生産工場を南下させる案も出ています。こうしたことから、中国産(外国産)クオリティが上がることは期待できません。

国産について

これまでは奥井畳店が中国産を避ける理由をお伝えしましたが、ここからは日本の畳文化存続のための大黒柱であるイ草農家の現状についてお伝えしたいと思います。

イ草農家の減少

平成元年、熊本県にイ草農家は5460軒ありました。
熊本県八代市が日本一のイ草生産量であることもあり、同市ではイ草がかなり日常的に認知されていました。
畳に関する地域のお祭りもあるくらいです。

それがどんどん減少していき、平成10年には2831軒と約半数に。平成27年には平成元年の10分の1の数になってしまいました。

この文章を書いている令和3年には319軒になり、その数はどんどん減少しています。

昔をご存じの方なら、「他にも岡山県や広島県があるんじゃないの?」と思われると思います。
しかし岡山県ではイ草農家は0件。広島でも、最近新規で農家になったものがいて1件と聞いています。
他の地域、例えば四国や中部地方でもイ草農家はいますが、いずれも10軒に満たない数です。

熊本県八代市がイ草生産量日本一であることには変わりありませんが、その生産総数は激減しています。

イ草農家の経営主の年齢

そうなると問題になるのが跡継ぎ問題です。
当然ながら跡継ぎ候補はかなり少なく60軒ほどと言われていますが、その数も80軒から減っています。現状の需要と供給、労働の過酷さの割に賃金が見合っていないことから別の農家に転向する方が多いです。

令和元年時点での経営主の年齢層は、50歳以上で5分の4を占めています。中でも60歳以上が全体の約半数を占めており、ここ数年の間でイ草農家の数は激減することが予想できます。

跡継ぎの人数と廃業する人数は大きく差が開かれるでしょう。

イ草農家の減少・高齢化によって起こる弊害

では具体的にイ草農家が減少し、高齢化が進むとどうなるのかを考えてみましょう。

畳の価格上昇

まず単純に畳の価格が上昇するでしょう。今回はイ草農家の減少を観点にしていますが、畳屋も同じように減少の一途をたどっています。

加えて肥料や資材の価格上昇、国内輸送コストや原油価格の上昇もあるので、畳の価格の上昇は確実です。

天然国産イ草に代わる畳表の席巻

天然の国産畳表が生産できないならどうするか、というと、前述の中国産の畳表に頼るか、もしくは化学畳表と呼ばれるものを使用することになります。

現在化学畳表は「ダイケン」というメーカーと「セキスイ」というメーカーがそのほとんどを作っています。
それは何を意味するかというと、値段決定権がたった2社になることで、図らずも談合状態になってしまい、価格の上昇を止められないということです。

つまりその2社の言い値になってしまうということです。

実はこの化学畳表のことも、奥井畳店は推奨していません。
メリットはもちろん存在しますが、デメリットもあり、この化学畳表のメリットをはるかに凌駕するメリットが国産畳表には存在するからです。

畳文化の衰退

現在でも畳文化は衰退していると言われていますが、国産畳表が高騰すれば、一般消費者では到底手出しできなくなり、和室自体が減少していきます。
そうすると畳が家庭にあることの方が珍しく、畳が何かを知らない世代が多くなっていきます(実際今でも畳を知らないお子様は多数いらっしゃいます)。

前述したように、和室と洋室が共存できる日本住宅は、世界的に見ても非常に豊かです。それが洋室だけの家庭がほとんどになってしまうと、今まで享受されてきた畳の「良さ」というものがなくなってしまいます。

人は失ってから大切なものに気付くといいますが、取り戻せなくなってしまう前に何とかしたいと考えております。

具体的な対策はあるのか

さてこれまで中国産の畳表のことと国産の畳表のことを記述してきました。
では現状国産の畳表が減少し、実際に今自分の和室にある畳が国産のものであるかどうかもわからない状態で、どう判断したらいいのか、これから替えるにしてもどう精査すればいいのか、と思われるかと思います。

ここからは、現在している産地偽装への対策、一般消費者が何をどう気を付ければいいのかを記述していこうと思います。

現在している産地偽装への対策

冒頭でもお話した通り、騙して利幅を取ろうとしている業者のおかげで中国産畳表を国産畳表として扱われることが横行しています。

そこで産地では、国産畳表の証として、畳表を作る際に使用される経糸(これにイ草を絡ませて織っていく)を、数本色を変えることにしました。

しかし中国でも同じように経糸の色を変えられることをされ、現在では経糸だけでは判定できません。

次に生産者のハンコや農協での証明シールを畳表につけることにしました。それに加えて、畳表に国産証明のタグを挟み込み、そのタグについているQRコードを読み込むことで農家のトレサビリティを可能にしました。

そのおかげで、畳屋はかなり国産と中国産の見分けができるようになったと思います。
しかし、畳屋が一般消費者を騙すパターンはなかなか対策が難しいです。

パッと見ただけでは一般消費者では中国産と国産を見分けることは難しく、それがわかるのは時間が経ち畳表が焼けてからになります。

では一般消費者は被害者になり続けるしかないのでしょうか?

対策その1、熊本県産畳表応援店から探す

熊本県には「熊本県いぐさ・畳表活性化連絡協議会」という市営の組織があり、その中で「熊本県産畳表応援店」が検索できます。
このリストの中にある畳屋であれば信頼ができる可能性があるということです。
もちろん当店も加盟しています。

しかしながらその加盟方法がかなり簡単で、申請さえすればほぼ誰でもできてしまうような体制になっています。
なので、それを悪用しない畳屋がいないとは限りません。

対策その2、実際に店舗を視察する

信頼のおけるいい畳屋の見分け方を以前ブログでもご紹介しました。その中にも、実際にその店舗を訪問するというものがあります。

その店がきれいに保たれているかどうかもわかりますし、従業員同士の関係性などもわかります。
あとは実際にお見積りに呼び、お話を聞くことが一番いいと思います。

対策その3、HPのブログを見る

畳業界に限らず、いい企業が出すブログというのは、一般消費者に対してプラスの情報が多いです。
住宅業界のHPでも、「損をしない住宅の選び方」や「補助金制度のご紹介」等があるかと思います。

それに対し、あまり良くない企業のブログは「○○に行ってきました」や「新年会を行いました」等のそこまで一般消費者にとって必要でないものばかりです。

奥井畳店のブログやGoogleの投稿でもたまにそういった内容のものも投稿しますが、それは親しみを持っていただきたいからです。ご覧いただいている通り、一般消費者にとって有益な情報もたくさんブログでアップさせていただいているつもりです。

活動報告のブログ記事も、そういったイベント等があるとご紹介したいからです。

そういったように寄り添う気持ちで活動している企業は、畳屋だけでなくそのほかの企業でも評価できるはずです。

終わりに

いかがでしたか?
畳は住宅メーカーや工務店の予算の中でも最初に削られることが多い項目ですので、大抵の新築物件などではよっぽどのことがない限り中国産が使われる傾向にあります。

奥井畳店では、そういう物件でもできるだけ国産を使うように交渉しています。
畳は長年素肌が触れる、ないがしろにできないもの。だからこそ、消費者であるあなたにその畳がなんなのかを納得していただいてから使用してほしいと思っています。

ご自身が過ごされている和室の畳が確信をもって、安心できる国産畳であると自慢できる世の中を作りたいと思います。
そのために今後も情報発信、商品提供をしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

当店のご紹介「奥井畳店」

奥井畳店

・電話番号
078-841-0351 (不在の場合携帯へ転送されます)
・メール
okuitatami@gmail.com
・住所
兵庫県神戸市灘区桜口町2丁目3-21
・配達地域
神戸市、明石市、芦屋市、三田市、西宮市、尼崎市、加古川市(他、要相談)
・営業日
月曜日〜土曜日(祝日も営業中)

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